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防爆エリア(危険場所)でも安心!利用中のiPhone防爆化と基礎知識
工場や建設現場などのDX化が進む一方で、石油・ガスプラントや化学工場などの「防爆エリア」では、スマートフォンやタブレットの利用が厳しく制限されます。火花や発熱が重大事故につながる危険があるためです。
従来は高額な防爆スマートフォンが主流でしたが、近年では「既存のiPhoneに防爆ケースを装着する」という新たな選択肢も登場しています。本コラムでは、防爆の基礎知識から規格の概要、導入メリットまでを詳しく解説します。

目次
DX化が進む現場で広がるデジタルデバイスの活用
業務でスマートフォンやタブレットを利用しますか?
近年、企業におけるDX化が急速に進み、工場の製造ラインや建設現場での作業報告、写真撮影、図面確認の際に、タブレット端末などのデバイスを活用する事は珍しくなくなりました。
しかし石油・ガスプラントや化学工場、粉じんが発生する製造現場など爆発や火災の危険がある「防爆エリア(危険場所)」では、スマートデバイスを含む電子機器の持ち込みが厳しく制限されます。
わずかな火花や発熱が、爆発などの重大事故につながる可能性があるからです。

そのため、これまでは専用の防爆スマートフォンを導入することが一般的でした。
従業員の命を守る製品である以上、その価値に見合う投資は当然とされてきたのです。
ただ近年では「すでに利用している業務用のiPhoneに防爆ケースを装着する」という新しい選択肢も登場しています。
これは「コスト削減のため」だけではなく、導入の柔軟性を高め、現場の状況や運用に合わせて選べるようになったという点で、大きな変化です。
本記事では、防爆の基礎知識から、防爆スマートフォン・防爆iPhoneケースの特徴、そして導入までの流れをご紹介します。
基礎知識
防爆とは?
防爆(ぼうばく)とは、爆発を防ぐための構造や技術を指す専門用語です。
正式には「防爆構造電気機器」と呼ばれ、英語では Explosion-proof や Ex と表記されます。
可燃性ガスや粉じんが存在する環境では、わずかな火花や静電気、発熱が引火源となり大事故を招く恐れがあります。
防爆仕様の機器は、そうした着火源が外部に漏れないよう、特殊な構造や素材で設計されています。
防爆仕様の機器は、「火を出さない」「熱を外に伝えない」「壊れにくい」 という3つの特徴を持っています。

防爆機器の特徴
- 火花・熱を外部へ漏らさない密閉構造
- 端末の内部で発生した電気火花や熱を外に逃がさず、爆発性のあるガスや粉じんに触れさせません。
- 静電気の発生を抑える素材を採用
- 人の動作や摩擦で生じる静電気を極力抑え、着火のリスクを防ぎます。
- 頑丈で壊れにくい設計
- 落下や衝撃に強く、長期間安全に使い続けられます。
基礎知識
防爆規格の基本
防爆規格とは
防爆規格は、可燃性ガスや粉じんが存在する防爆エリア(危険場所)で電子機器を安全に使用するために定められた基準です。
ATEX、IECEx、TIISといった国際・国内規格があり、いずれも危険場所の区分(Zone 0/1/2など)に応じて適用範囲が細かく定義されています。
- ATEX
EU加盟国で製品を導入する場合、ATEX認証の取得が必須です。可燃性ガスや粉じんの危険度に応じて、「Zone 0」「Zone 1」「Zone 2」などのエリア分類があり、使用可能な範囲が細かく規定されています。
- IECEx
IEC(国際電気標準会議)によって制定された、グローバルに適用される防爆規格。各国での相互承認も進んでおり、複数の国や地域での使用を前提とする場合に適しています。
- TIIS(労働安全衛生法に基づく防爆構造検定)
日本の法制度に基づいた防爆規格であり、国内の危険場所において製品を正式に使用するには、この検定をクリアしていることが非常に重要です。
どの防爆規格にするか確認する
導入を検討する際は、「どの防爆規格に対応しているか」をしっかりと確認することが、安全と安心を確保する第一歩です。
日本国内の工場や設備での使用が中心であれば、TIISの認証を受けた製品が最適です。日本国内ではTIIS以外の認証では使用が認められないケースもあるため、法律に準拠した機器を選ぶことが非常に大切です。
ヨーロッパ市場向け、またはEU加盟国との取引が多い企業であれば、ATEX対応は必須です。EU域内ではATEXが法令上の前提条件となっているため、取得がなければ導入すらできません。
- どの地域で使うのか?
- どの法規制が関係しているか?
- 将来的に海外展開はあるか?
といった“使用環境と事業計画”に基づいて選定することが、もっとも安全で失敗のない導入につながります。
規格取得までのプロセス
防爆規格の認証を受けるには、非常に厳密で多段階の審査を通過しなければなりません。具体的には、
- 火花・熱・静電気などを発生させない構造設計の検証
- 使用される部品や素材の耐久性・安全性の確認
- 防爆性能に関する実地試験や破壊試験
- 書類の整備や工場での製造管理体制の審査
といった複数の過程があり、ひとつひとつを高い精度でクリアしていく必要があります。
特に日本国内でTIIS認証を受けることは、法的にも技術的にも非常にハードルが高く、簡単に取得できるものではありません。
基礎知識
防爆エリア(危険場所)の利用シーン
可燃性ガスや粉じんが存在する可能性がある場所は、「爆発性雰囲気の存在頻度」に応じてゾーン分類(危険区分)されます。
この区分は防爆機器の選定基準にもなっており、規格(ATEX/IECEx/TIIS)でも共通して用いられています。
【ガスにおけるゾーン分類】
ゾーン | 危険度 | 特徴 |
Zone 0 | 最も高い | 可燃性ガス・蒸気が常時または長時間存在する場所(例:タンク内部、密閉容器内) |
Zone 1 | 高い | 可燃性ガス・蒸気が通常の運転中に発生する可能性がある場所(例:バルブ周辺、配管接合部) |
Zone 2 | 比較的低い | 通常は存在しないが、異常時(漏れなど)に短時間存在する可能性がある場所(例:機械室、外部周辺) |
【粉じんにおけるゾーン分類】
ゾーン | 危険度 | 特徴 |
Zone 20 | 最も高い | 粉じんが常時または長時間、または頻繁に浮遊または堆積している場所(例:サイロ内、ホッパー内部) |
Zone 21 | 高い | 粉じんが通常の運転中に発生する可能性がある場所(例:袋詰め工程付近) |
Zone 22 | 比較的低い | 通常は存在しないが、異常時に発生する可能性がある場所(例:集塵機の周囲) |
防爆スマートフォンと防爆iPhoneケースの導入メリット
防爆対応のスマートフォンやケースは、一般的なスマートフォンと比べて高価です。たとえば、防爆スマートフォンは50万円前後が相場で、Smart-Ex03やarkPhoneなどが有名です。
一方、防爆iPhoneケースの場合は、ケース単体で約20万円~約30万円程度と、比較的導入しやすい価格帯です。
機種変更時のケース差し替え費用は約20万円ほどが目安となっています。
防爆ケースの特徴
厳しい防爆規格(Zone 2・IECExなど)に適合するよう設計されています。
充電端子の構造を含む専用の堅牢設計(※出力30%のワイヤレス充電対応)製品によっては充電端子部分は専用ピンで開閉する密閉構造で、高い気密性と安全性を確保しています。
さらに、Face ID・Touch IDの使用可/ストラップ装着可といった、使い勝手の面でも安心です。
物理SIMは脱着不可の設計が多いのでeSIM運用を採用することで、現場でのSIM交換リスクも回避できます。
eSIMに関する詳しい記事はこちらをご覧ください。
防爆製品は、すぐに手に入るものではないことが多いですが、防爆iPhoneケースは比較的柔軟な納期対応が可能です。
納品目安:端末受け取りから約2週間(混雑時は要相談)
対応台数:5〜10台程度なら2週間での納品実績あり
サンテレコムジャパンでは、申し込み受付からキッティング作業、納品まで一貫で対応可能。現場ですぐに使い始められるのも魅力です。
防爆エリアで使える製品を選ぶポイント
防爆エリア(危険場所)の区分や規格を理解したら、次に重要になるのが「自社の現場に適した製品をどう選ぶか」という点です。
Zone 0やZone 1のような高リスクエリアでは、防爆専用スマートフォンの導入が不可欠です。
一方で、Zone 2といった比較的リスクが低い環境であれば、現在お使いのiPhoneに防爆ケースを装着する方法が有効な選択肢です。既存端末をそのまま活用できるため導入がスムーズで、現場の運用にもすぐ馴染むのが大きなメリットです。
おすすめの製品: 日本防爆仕様 iPhone arkPhone
日本防爆検定を取得した専用ケースにお客様のiPhoneを組み込むことで、お使いのiPhoneを防爆スマホとして利用することができます。対応機種はiPhone 13、iPhone 14、iPhone 15、iPhone 16/16eです。
- 日本防爆検定取得、第二類危険箇所(Zone2)対応
- 音声通話対応、Bluetooth、Wifi・5G
- 充電形式:非接触充電(Magsafe対応)

おすすめの製品:iPhone 13防爆ケース C1D2 / ATEX Zone 2対応
本製品は、危険区域(C1D2 / ATEX Zone 2)での安全な利用を可能にするiPhone 13専用の防爆ケースです。軽量かつコンパクトな設計で携帯性に優れ、現場での使用を想定した堅牢な保護性能を備えています。危険区域でのモバイル運用を支えつつ、直感的な操作性と利便性も確保したケースです。
- 安全性:認証証明ラベル付きで防爆規格に対応
- 耐久性:防水・耐衝撃構造により過酷な環境でも安心
- 操作性:ON/OFF、音量調整、ミュートボタンをスムーズに操作可能
- カメラ保護:レンズ部分を守るカメラカバー付き
- 充電・通信:ワイヤレス充電およびLightningケーブル対応、Bluetooth接続可能


防爆iPhoneケースの手配にかかる時間
一般的には2週間~2ヶ月程度が目安ですが、在庫状況や機種により変動します。
注文から納品までの流れ
- 機種選定・仕様確認
- 見積・発注
- 認証証明書の取得確認
- 納品・初期設定
事前に考慮すべきポイント
- 対応ゾーンの確認(Zone 1 / 2など)
- 通信方式(4G, Wi-Fiなど)
- 防水・防塵性能の有無
- 保守サポートの体制
防爆エリアでの音声通話なら無線機という選択肢も
もし音声のやりとりで充分でしたら、防爆無線機もおすすめです。危険物を扱う現場では、確実で即時に伝わる手段が欠かせません。
無線機には、スマホにはない強みがあります。
即時性:ボタン操作だけで素早く通話が開始でき、安定した通信が可能
堅牢性:過酷な現場環境に耐える設計と、長時間稼働するバッテリー
同報性:複数人へ同時に一斉通話が可能で、緊急時にも確実に情報伝達ができる
スマートフォンと防爆無線機の違い・役割
比較項目 | 防爆スマートフォン /防爆 iPhoneケース | 防爆無線機 |
通信方式 | 携帯回線・Wi-Fi・インターネットベース | 専用無線周波数(免許制) |
即時性 | 高いが通信状況に左右される | ボタン1つで即時通話、安定 |
情報量 | 写真・動画・図面・遠隔支援など多機能 | 音声通話に特化、シンプルで確実 |
操作性 | タッチ操作、グローブ非対応機種もある | グローブ対応の物理キー |
電源管理 | ワイヤレス充電(30%出力)、バッテリーに注意 | 長時間使用対応の交換式バッテリー |
対応環境 | Zone 2(ケース)/Zone 1~2(スマホ本体) | Zone 1/Zone 2 両対応モデルあり |
防爆スマートフォンと防爆無線機は、どちらか一方ではなく、両方の特長を活かす併用運用がおすすめです。
使い分けることで、現場での「安全」「即応」「効率」を同時に実現できます。
おすすめの業務用無線機
STJグループでは、法人向け携帯電話だけでなく、業務用無線機も取り扱っています。
販売・レンタルのどちらにも対応しており、防爆仕様の特殊モデルもラインアップに含まれています。詳細は、【無線機・トランシーバーのSTJレンテック】のサービスサイトにてご紹介していますが、本ページでも代表的な機種をご紹介いたします。
防爆無線機「NX-330EXCT」― 導入しやすく、確実に伝える音声専用端末
JVCケンウッド製の「NX-330EXCT」は、本質安全防爆構造(IECEx / ATEX準拠)に対応した簡易業務用の防爆無線機です。Zone 1/Zone 2 の危険区域でも使用可能で、確実な音声通話を重視したい現場に選ばれています。
本機は、簡易業務用無線(免許局CR/3B/1.2W)に対応しているため、導入ハードルが低いのが特徴です。包括免許でまとめて管理でき、特別なインフラ工事や資格も不要。台数の増減にも柔軟に対応できます。
操作はボタンひとつで即通話開始できるプッシュトーク式で、ネットワークの混雑や電波障害の影響も受けにくい仕様。グローブを着けたままでも扱いやすい設計で、屋外や粉じん環境でも安定して使える堅牢性を備えています。
「音声だけを確実に伝える」専用機として、防爆スマートフォンではカバーしきれない現場連携に最適な1台です。
実際に油槽所などの危険物取扱現場でもご採用いただいた実績があり、過酷な環境でも安心して運用できる防爆無線機としてご好評をいただいています。
詳しくは、導入事例ページにて現場での活用の様子をご紹介していますので、ぜひご覧ください。
また、STJレンテックでは販売だけでなくレンタルにも対応しており、スポット利用も可能となっています。詳しくはSTJレンテックの製品ページよりお問い合わせください。
まとめ
本記事では、防爆の基本的な考え方と関連する製品について解説しました。
危険区域の特性に応じて、適切な防爆構造を持つ機器を選び、適切に利用することが不可欠です。
実際に防爆エリアでの導入を検討する際には、現場での危険要因や対象となるZoneの種類などを共有ください。STJグループでは、様々な製品を防爆エリアへ導入した数多くの実績があります。現場に直結するソリューションをワンストップでご提供していますのでお悩みがありましたらぜひご相談ください。
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